ソムリエ:皆さんご存知のように、レストランにてサービスをするワインのスペシャリスト達。1995年「世界ソムリエコンクール」にて日本代表の田崎眞也さんが見事優勝し、一躍花形の職業として注目を集め始めた「ソムリエ」というお仕事。昨年、労働省は職業分類表を14年ぶりに手直し、職業紹介やハローワークでの職業名に「ソムリエ」を新設しました。 現在のところ、「ソムリエ」という国家資格はありませんが、(社)日本ソムリエ協会がこの呼称資格認定試験を行っています。今回は、そんな資格のお話です。 |
サービスの経験を積みながら、ワインの勉強をしている人達にとって、ソムリエの登竜門とも言えるのが日本ソムリエ協会のソムリエ試験。日本ソムリエ協会は、1969年に現名誉会長の浅田勝美氏を中心としたサービスマンたちで発足させた飲料販売促進研究会がその前身。1976年に(社)日本ソムリエ協会(JSA)と改称し、ワインに携わる人々の資質の向上にむけて発展してきました。1986年には国際ソムリエ協会(ASI)へ加盟。現在では、多くのセミナーを開き、「全日本最優秀ソムリエコンクール」等の開催などワインに関する多数の事業を行っています。その事業の中の一つに「呼称資格認定試験の実施」があります。 |
現在のところ、ソムリエ資格は国家資格ではありませんので、資格を持たずして「ソムリエ」として働いても法律違反にはなりません。「ソムリエ」の認定試験は1985年に始められたため、まだ歴史が浅く、ベテランソムリエの中には資格を持っていない方々もいらっしゃるようです。しかしながら、この認定試験は年々その受験者数も増え、その認知度と共に重要性を増してきています。また1986年には、酒販店等を対象にした「ワインアドバイザー」の呼称資格が出来ました。 当初からワインの知識を公に判定するこれらの資格は、ワイン愛好家にとっても魅力的なものだったらしく、プロ達に混じってソムリエやワインアドバイザーの呼称資格を取得しようとするワインラヴァーが後を絶たなかったようです。そこで1996年には一般のワイン愛好家を対象とする「ワインエキスパート」の呼称試験が誕生しました。 |
日本ソムリエ協会が行う3種類の資格制度(実際には上位資格の「シニアソムリエ」「シニアワインアドバイザー」等もあります)についてその受験資格を記しておきます。 |
第一次試験日において、アルコール飲料を含む飲食サービス業経験を通算5年以上有し、現在も従事している方 | |
第一次試験日において、以下の業務経験を通算3年以上有し、現在も従事している方 ・ 酒類製造および販売、コンサルタントなど流通業 ・ 飲食に関する専門学校など教育機関における講師 ・ 調理従事者 | |
ワインの品質判定に的確なる見識をもっている方 年齢20才以上 職種・経験は不問 |
1999年までのそれぞれの資格保有者数は、ソムリエ4769名、ワインアドバイザー5159名、ワインエキスパート806名。 |
この呼称資格認定試験は、毎年8月の末、札幌、仙台、東京、那覇、名古屋、大阪、福岡にて第一次試験が同時に行われます。第一次試験に合格された方のみ9月末の二次試験(二次は東京、大阪の2会場)へ進む事が出来ます。そう、今、その試験真っ最中なのです。今ごろ、第一次に合格された方々は、二次のテイスティング等のお勉強に余念がないことでしょう。 第一次試験は、ソムリエ、ワインアドバイザー、ワインエキスパート共に共通の筆記試験で、例年約70問が出題されます。出題範囲としては、受験者に配布される右の「ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート 教本」と考えてよいでしょう。ただこの教本、1999年度版で全730頁強。かなりの量があり、当然フランス、イタリア、ドイツから新世界のワインの法規、そして公衆衛生と食品保健、管理と販売、ワインと料理等、ワインに関する基礎知識が網羅されています。第一次試験の合格ラインは、その年の平均点にもよりますが、一応70点が目安という事です。 ただこの広範な出題に対して、助け舟を出してくれるのが、協会の主催する「基本技術講習会」。試験の前に二日間(各都市で延べ10回位開かれます)に渡り、試験のための講習が行われます。これはその年の出題を暗に示唆する部分もありますし、講師の面々は著名なソムリエさん達によって行われますので、楽しいお話も聞くことが出来ます。受験される方は、出席したほうが良いでしょう。 第二次試験は、ワインの口頭試問(問題がテープで流れる)とテイスティング。ソムリエにはサービス実技が加わります。口頭試問には、基礎知識だけでなく、ワインの雑学的な分野まで出題されます。 |
イタリアワイン、そしてオー・ド・ヴィーまで出ましたので、受験者もビックリしたことでしょう。またこの年から、テイスティングの解答にも初めてマークシートが導入されました。今年はどんなワインが出るのか楽しみです。 |
第一次受験者数 : 1901名 第二次受験者数 : 1166名 合格者数 : 917名 合格率 : 48.2% | |
第一次受験者数 : 2360名 第二次受験者数 : 1182名 合格者数 : 743名 合格率 : 31.5% | |
第一次受験者数 : 873名 第二次受験者数 : 458名 合格者数 : 391名 合格率 : 44.8% |
まずは一次試験の筆記試験を突破しなければなりませんが、その問題は年々ハイレベルになっている様子。勉強は過去問題を十分にやる必要があります。 早速、今年2000年の出題と回答が発表されました。その内容につきましては、後述する日本ソムリエ協会が発行する機関誌「Sommelier」の最新号No.56に掲載されていますので、ご覧になって下さい。 |
このページを見て頂いている方々は、多分ワイン愛好家の方が多いと思います。ソムリエが付ける「葡萄のバッジ」はかっこいいし、ワインのスペシャリストという感じがします。日本において、協会が行う認定試験は、唯一 公的に「ワインの知識と品質判定に優れた見識」を持つ人と認められるもの。ワインエキスパートの資格が出来た今、是非チャレンジするのも良いと思います。 |
資格に合格したからどうなるのか??class30が思うに、仕事で役立てる方以外は、なんの得にもなりません。仕事で携わる方々にとっても、ただの通過点でしかないでしょう。 しかしながら、一番大切なことは、試験に向って勉強をするという事ではないでしょうか。先出のように試験範囲は世界のワイン法規が中心となっています。各国のワイン法規は、その土地の気候、歴史、文化などに則って、細かに定められています。この部分を知った上でワインに接するという事はとても大切な事。一本のワインを飲む時にも新たな疑問が生まれたり、違う側面から判断でき得ると思います。また教本の膨大な資料は、今まで全く知らなかった部分に関して、興味を深めてくれると思います。 ワインの楽しさは、学ぶこと。ちょっと知れば、もっと知りたくなる。それだけ奥も深ければ、楽しみも待っている飲物のように思えます。 |
左は日本ソムリエ協会が発行する機関誌「Sommelier」の最新号。表紙はトゥール・ダルジャンのソムリエ、石田博さんです。この最新号にもトップ記事として掲載されているのが「第10回世界ソムリエコンクール・モントリオール大会」に日本代表として出場される石田ソムリエのインタビューです。 「世界ソムリエコンクール」は3年に一度、世界から優秀なソムリエが集い競う「ソムリエのオリンピック」のようなもの。今年は10月にカナダのモントリオールで開催されます。 青木冨美子理事のインタビューによるこの記事には「バランスのとれたソムリエ」を目指すという石田ソムリエの姿勢が感じられる内容。そこには、世界を目指す後続の若手ソムリエに贈るこんな言葉もありました。 「海外の人達に対して"控えめ"を美徳としないで、多くのコミュニケーションをとって欲しい。(中略)それと、テイスティングできることに"貪欲さ"と"感謝の気持ち"をもって欲しいと思います。」 ソムリエの国内大会にて何度も優勝している石田ソムリエ。そんなトップの方でも直向な努力と向上心が感じられるお言葉。10月の"ソムリエ・オリンピック"での活躍を期待しています。皆さんも応援して下さいね。 |
2000年10月7日、いよいよ「第10回世界ソムリエコンクール・モントリオール大会」決勝の当日。予選を見事通過し、ファイナルの4名に勝ち残った石田ソムリエは、なんと世界第3位となりました。本当におめでとうございます。 なおこの57号には、2000年度の呼称資格認定試験合格者、そして第二次試験の問題と解答も掲載されています。 |
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