ヴェルヌの "De la Terre a la lune" (1865) に莫大な量の詳細な注を付け た英訳の邦訳。1981年に東京図書から刊行されたものの文庫化。
原題その他は、
Walter James Miller, "The Annotated Jules Verne: From the Earth to the Moon", Harper & Row, 1978.
この本の価値は何といっても註にある。冒頭の一文から結末の一文まで、ボ ルチモアという地を舞台に選んだ理由からヴェルヌの少年時代の原体験まで、あ れやこれやの384個。ジャンルも百科事典的で多岐にわたる (物理学、天文学、 博物学、地理学、科学史、技術史、思想史、文化史、文学、精神分析……)。刊 行当時、「すげえなあ」と感嘆しながら読んだものだが、次第にどこに何が書い てあったか収拾がつかなくなって混乱に陥り、ライプニッツの名前を見つけたあ たりで「索引があったら便利なのに」と思い始めた。しょうがないから自作し、 知人にメールで送ったりもした。ここに載せるのは、それにいくらか手を加えた もの。
項目の選定は恣意的である。
基本的に「序」「あとがき」および注の部分から抜き出したもので、ヴェルヌの
本文の方は対象外。
●事項・人名 1860年代後半のドル 194, 230, 266 97時間13分20秒 112-3, 117 ne plus ultra (コレヨリ先ハ不可) 333 TNT火薬 540 -> 「火薬」も見よ urbi et orbi (都及ビ全世界ニ) 252 アーク燈 296 -> 「電燈」も見よ アームストロング (ニール) 521, 527 アイルランド人 92, 304 アキレス 154 アグリコラ (ゲオルギウス) 303-4 アステロイド -> 「小惑星」を見よ アトランタ包囲戦 192 アナグラム 67, 339 アポロ3号 414 アポロ8号 17, 174 -> 「ボーマン大佐」も見よ アポロ11号 17, 112, 150, 521, 526-7, 540, 555 アポロ15号 140 アポロ計画 139, 266, 564 アラゴー兄弟 452-3 アラビア (の天文学者) 151-2 アリスタルコス 130 アルミニウム 176-8, 208 アルキメデス 396 アルクトゥルス 380 アングロフォビア (英国嫌い) 253-4 暗号 67, 328 アンドロメダ星雲 119 アンペール 442 イェイツ (W・B) 431 いかにもアメリカ型のひげ 398-9 イカロス 361 異星人 178-9 いなごジュース 95 隕石 183, 390-1 インディアン 238-9, 281-3, 314-5 ヴァイス (ペーター) 172 ヴィクトリア女王 484 ウィトルウィウス 355 ウィルキンス (ジョン) 455 ウィルバーフォース僧正 542 ウェルズ (H・G) 538 ヴェルヌ (ジャン・ジュール;孫) 174 ヴェルヌ (ピエール;父親) 58, 73 ヴォルテール 170, 360, 392, 516 渦巻星雲 493-4 宇宙基地 326 宇宙探検の心理学 178 宇宙飛行士 338, 360, 414, 475, 512, 521, 526, 559 -> 「アームストロング」「ボーマン大佐」も見よ 衛星の数 129 SF 89, 228, 464, 538, 559, 568 エッツェル (ジュール) 479 エディソン 297 エマソン 271 円環 479, 559 婉曲語法 484 エンペドクレス・コンプレックス 539 オウィディウス 141 黄熱病 241 狼男 141-3 オーベルト (ヘルマン) 416 オールディス (ブライアン) 18 おかたい英訳本 (やっつけ翻訳) 15-9, 95, 220, 322, 364, 379, 462, 561, 569 [1] オゾン (の発見者) 207 オックスフォード大辞典 94 オデュッセウス 302 女嫌い 219, 323-4 ガードナー (マーティン) 18 カーライル 271, 431 海王星 128, 161, 376, 383-5 海図 251-2 回転楕円体 502 怪物じみたイカ 260 カイヨワ (ロジェ) 430 ガウス 87 カウント・ダウン 535 蛙 530 火炎放射器 198 科学と宗教 252-3, 306, 461, 541-2 科学啓蒙家 198, 487 革命 259, 332, 525 賭け 448 火星 129, 376 カタログ趣味 258 カッシーニ 144, 492 カトリック 462 -> 「科学と宗教」も見よ 蟹星雲 504 カノン砲 -> 「火砲の種類」を見よ 火砲の種類 189 火薬 197-201, 207-9 カリアティッド (女人像柱) 355-6 ガリレオ 134-5, 488-90, 518-9 ガル (フランツ・J) 456-7 カロネード砲 193 緩衝装置 443, 462-3, 474 観相学 76, 356-9 -> 「ラファーター」も見よ カント 124 カント=ラプラースの星雲理論 123-6 気圧計 182 気球 31-2, 231, 339, 463-4, 466-7, 526 キケロ 312 義足 44, 59 ギボン 312 キャロル (ルイス) 479 臼砲 -> 「火砲の種類」を見よ キュクロプス 302 ギリシア火薬 197-8 キルヒホッフ 98, 508 キルヒャー 139, 292 金貨 261, 267 銀河系 123 金星 136, 376, 504 近地点 110 クーパー (J・F) 282, 366 屈折望遠鏡 487-90 グッタペルカ 61-2 クラーク (A・C) 227, 284, 416-7 クラーク (アルヴァン) 108-9 クラカトア火山 547 クルップ (アルフレート) 48, 51 クレーターの起源 138-40 クレオール 97, 244 クレッチュマー 359 クロノメーター 73 ゲーテ 35, 358 ケープ・ケネディ 248, 285, 527 決闘 248-50, 422 -> 「ケンタッキー式決闘」も見よ 月面地図 139, 211, 305, 513 -> 「セレノグラフィー」も見よ ケプラー 132-3, 148, 490 幻視家 297 ケンタッキー式決闘 428 原爆 540, 546 ケンブリッジ天文台 (ハーヴァード大学天文台) 106-15, 183, 273, 375, 545 高貴なる野蛮人 270-2 恒星までの距離 380-3 光速度 98 鉱物的想像力 317, 334, 440-1 コールリッジ 271 黒色火薬 197, 199 骨相学 -> 「ガル」を見よ ゴッド・セイヴ・ザ・クィーン 532 ゴドウィン (フランシス) 82, 464 コペルニクス 132-4 コルネーユ 144 コロジオン 208, 212-3 コロンビア (合州国の女性擬人化) 162, 165 コロンビアード砲 162-3, 165, 189, 190, 194, 230, 306, 319, 397, 414, 418, 540 コンドルセ候爵 374-5 サド候爵 172-3 猿の蒸し焼き 530-1 サンタ・アナ将軍 246, 330-2 シェイクスピア 103-4, 360, 437 ジェイムズ (ヘンリー) 366 シェリーコブラー 95 [2] シクロフスキー 127, 391 思考実験 158 視差 381 支配的な感情 (体液の理論) 362-4 シャーマン将軍 192 シャラントン村 172-3 シャルル六世 455-6 ジャンボ (象) 458 十字軍 199 集団ヒステリー 260 重力加速度 183, 412, 474 ジュール・ヴェルヌ (地名) 305 ジュール・ヴェルヌの肖像 340 シュトルーフェ一族 490-1 シュヴァルツ (ベルトールト) 196-7 シュルレアリスト風 561, 568 ジョイス 431 ジョーク 212 -> 「政治的ジョーク」「猥褻な冗談」も見よ 少年時代 274 小惑星 128 シラノ 83, 84, 395 シリウス 108-9, 380-3 進化論論争 543 真空 385-6 人工衛星 158-61 人工降雨 550 新聞 100 進歩の法則 374 彗星 161, 253-4, 377, 404, 406 水星 376 スウィフト 83, 129, 431 スウェーデンボルイ 387-8 数字の辻つま合せ 187 スター・スパングルド・バナー 534 スターン (ロレンス) 431 スタビライザー 468 スッポン (フロリダの) 276 スティーヴンソン (R・L) 439 ストーヴパイプ帽 76-7 スパルタ 250 -> 「ラコニア王国」も見よ スプートニク2号 462-3 スミソニアン研究所 101-2 セーガン (カール) 127, 178-9, 391 政治的ジョーク 234-7 星蝕 403 精神分析的 561, 568 性的イメージ 219, 224, 323-4, 333-4, 566-7 セール (ミシェル) 429 世界七不思議 322 石油 64 セルヴィエ (ジャン) 536-8 セレノグラフィー (月理学) 81, 513-8 装甲板 221, 223-4, 230, 324 ソロー (H・D) 235 ダーウィン (チャールズ) 542-3 ターレス 130 ターレル銀貨 261 大気 100 大西洋海底電線 341-3 対蹠地 547-8 タイム・リミット (との戦い) 535 太陽風 378, 406 ダナオスの娘たち 364 タランチュラ 435 タレス 130 ダンテ 437 弾道学 47 タンパ (フロリダ州) 238, 243, 248, 288, 329, 349, 370 チチェローネ 312 父ヨセフの井戸 294 中国 197-200 ツィオルコフスキー 416 潮汐力 152 通過儀礼 334, 480 月の人体への影響 153, 453-4 月の大気 402-4, 409, 555 月の秤動 -> 「秤動」を見よ 月の水 521 月までの距離 183 ディケンズ 290, 458-9 ティコ・ブラーエ 131, 133-4 定常宇宙 120-2 手紙 (小説の装置としての) 118 テキサス共和国 234-5, 245-6 テクノロジー (と自然との合体) 316-7, 328 テクノロジー (の独走) 228-9 テクノロジー (美としての) 306-8 鉄道工事 (ぞんざいきわまる) 290 電気 298 電燈 296-8 天王星 376 電報 341-2 電報 (文学的手法としての) 338-9 デンマーク人の海洋探検 264 ドイル (コナン) 339, 358, 430, 479, 556 トウェイン (マーク) 543-4 桃源郷 275 -> 「ユートピア」も見よ 当時の物価 -> 「1860年代後半のドル」を見よ ドーミエ (オノレ) 466-7 時計 73, 535-8 ドストエフスキー 439 土星 121, 376 トリチェリ 182 ドレイク (フランク) 179 奴隷制 287 ナイアガラ瀑布 316-7 ナダール 29-33, 339-40, 365, 453, 466-7, 476 ナポレオン (ボナパルト) 55, 258-9, 525 ナポレオン (ルイ) 170, 177, 218, 236-7, 258-9, 264-5, 269, 452, 484, 565 ニーダム (ジョセフ) 199 ニコルソン (マージョリー) 84, 387, 395, 454-5 二酸化炭素 482-3 日蝕 403 ニューカム (サイモン) 411 ニュートン 148, 158-61, 375, 462, 488, 499 ニューファウンドランド犬 518-20 ノヴァーリス 334 ノルウェーの独立 262 バーク (エドマンド) 312 ハーシェル (ウィリアム) 128, 134, 144, 147, 407, 491-2, 495-6 ハーシェル (キャロライン;ウィリアムの妹) 495 ハーシェル (ジョン;ウィリアムの息子) 85-7, 128, 495, 548 バートラム (ウィリアム) 239-40, 269-73, 276, 280-3, 435 バートン (ロバート) 430 バーナム 35, 457-61 π (パイ) 292 パイオニア10号 178 ハイネ 275 バイロン 543 パエトン 360-1 博物学 270-1 -> 「バートラム」も見よ 博物誌 273, 458 -> 「バートラム」も見よ 破砕力 202 パスカル 182 バスチーユ 170 ハックスレー (トマス・ヘンリー) 542 パットン将軍 155 パナマ帽 528-9 パリ万国博 (1855年) 177 パルサー 504 バルザック 358 バルト (ロラン) 477-8 バルトルシャイティス 359 ハレー 136, 406 ハレー彗星 377, 406, 515 反射望遠鏡 488-9 ハンセン (ペーター・A) 410 ビーヴァーの皮 527-9 ビッグ・バン 120-3 ヒッパルコス 130 百科事典 317, 430-1, 478-9 百科全書的 429 -> 書名の『百科全書』も見よ ビュトール 298, 328 ビュフォン伯爵 403 表現の自由 269 秤動 146, 411 ファゾム (単位) 324 ファブリキウス 81 フィードラー (レズリー) 459 フィッツロイ (ロバート) 542-3 フーコー (ミシェル) 397 フーコー (J・B・レオン) 494, 548-9 フォン・ブラウン 417 フォントネル 84-5 フック (ロバート) 498-9 プトレマイオス 132 普遍数学 517 フライ (ノースロップ) 431 ブラックジャック 102 フラミンゴ 281 フランクリン (ベンジャミン) 100-1 フランス学士院 38, 260 フリークス (畸型) 457-9 プリニウス 141 ブリヨン (マルセル) 334, 437 プルースト 431 ブルーノ (クレーターの名前) 138 ブルス (パリ株式取引所) 28-9, 370, 540-1, 543 プルタルコス 387 ブルックリン橋 296 フロイト流の分析家 219, 220 -> 「性的イメージ」も見よ ブロッホ (エルンスト) 275 プロテスタント 462 フロベール 430, 459, 479 フロリダ 248, 250, 275, 281, 284-5, 289, 326, 328-30, 445, 559 -> 「スッポン」「タンパ」も見よ 文学的力量 231 分光学 404 分身 439 ブンゼン 508 ベイコン (フランシス) 228-9, 363, 454 ベイコン (ロジャー) 199 ベッセル 380-2 ペミカン (肉ビスケット) 520 ヘロドトス 141 ボイジャー1号 179 ホイットマン 459 ホイヘンス 499 望遠鏡 106-8 -> 「屈折望遠鏡」も見よ 砲弾の試射実験 223 砲の暴発 56-8 ポー 82, 86-7, 358, 430, 439, 459, 479, 536 ホーソン 437 ボーデン (ゲイル) 520 ボードレール 339 ポープ 362-3 ボーマン大佐 (フランク) 174, 248, 475, 559 ホームズ (シャーロック) 339, 430, 479, 556 保守主義 (科学に対する) 260 ポピリウスの輪 378-9 ホフマン (E・T・A) 334, 441 ホメロス 154, 240-1 ボルヘス 428-31 マグヌス (アルベルトゥス) 199 マチューリン (C・R) 536 マックスウェル (J・C) 126, 378 マラリア 304 マルディ・グラ (告解火曜日) 97 満月 141, 453-4 ミード (リチャード) 152-3 ミシュレ (ジュール) 172 民主主義 (に対する皮肉) 411 民族自決の原則 262 無意識 440, 567 無限 478 冥王星 150, 161, 376-7, 384-5 メートル法 200 メキシコ 234-7, 244, 246 メルヴィル (ハーマン) 358, 367, 429, 440, 479 綿火薬 208-9, 540 モーリー (マシュー) 251-2 木星 126, 150, 376, 393 森 (象徴としての) 437 紋切り型 (の登場人物) 431 モンテーニュ 363 モンロー・ドクトリン 265 冶金術 230, 316-7, 334 -> 「錬金術」も見よ 野蛮人 282 ヤンキー・ドゥードル 532-4 ユイスマンス 459, 479 ユートピア 395, 454, 460, 477, 480-1, 536-8, 559 ユゴー (ヴィクトル) 172, 459 予言 89, 112, 176, 209, 326, 332, 341, 378, 416, 443, 461, 496, 502-3, 550, 562-3 ライカ犬 462-3 ライプニッツ 392, 516-7 ラコニア王国 250 ラファーター 76, 356-9 ラプラース 124-6, 152 ラブレー 430 ラマダーン 262-3 ラ・マルセイエーズ 258-9 リーグ (単位) 112, 375-6 リーニュ (単位) 184 リオ・ブラボー (河) 240 龍舌蘭 244 榴弾砲 -> 「火砲の種類」を見よ リュームコルフ装置 507 リンカーン (エイブラハム) 103, 235 類型学 258, 362 ルーセル 67 ルーブル銀貨 261 ルキアノス 387 ルソー (ジャン・ジャック) 271, 282 レアール金貨 267 レオナルド (ダ・ヴィンチ) 292 錬金術 197, 334 レンブラント 366 ローウェル (パーシヴァル) 383-5 ローズ (セシル) 449 ロケット 378, 414, 416-8, 554 ロバの橋 87 ロビンソン・クルーソー 301 ロマン派 94, 258, 270, 328, 334, 441 ロンブローゾ 359 ワーズワース 271 猥褻な冗談 219 鰐 272, 280 ●ヴェルヌの作品 『折れた麦わら』(戯曲) 219 『ザカリウス親方』(1854) 536 『気球に乗って五週間』(1863) 228, 231, 339, 431-2 『地底旅行』(1864) 317, 334, 440 『密航者』(1865) 45 『月世界旅行』(1865) 137 『アトラス船長の冒険』(1866) 282, 326 『グラント船長の子供たち』(1867) 253 『月世界探検』(1869) 83, 117, 319, 417, 439, 448, 466, 476-7, 480, 523, 535, 537, 548, 553-4, 556-60 『海底二万マイル』(1870) 118, 172, 228, 262, 274, 298, 301, 317, 342, 359, 432, 477, 535, 559 『浮かべる都市』(1872) 317, 343 『三人のロシア人と三人のイギリス人の冒険』(1872) 442 『八十日間世界一周』(1873) 282, 535, 559 『神秘の島』(1875) 57, 292, 317, 477 『大法官』(1875) 282 『エクトール・セルヴァダック』(1878) 121, 253-4, 549 『王女の五十億フラン』(1878、『インド王妃の遺産』) 229, 307, 317 『頑固者ケラバン』(1883) 263 『南の星の謎』(1884) 450 『くじ引き券』(1886) 262 『北対南』(1887) 287 『名のない一族』(1889) 253 『紀元二八八九年』(1889) 308 『上も下もなく』(1889) 396-7 『ミストレス・ブラニカン』(1891) 253, 528 『カルパチアの城』(1892) 229, 538 『孤児ミック』(1893) 253 『動く洋上都市』(1895) 308, 370 『国旗に向って』(1896、『悪魔の発明』) 229 『世界の支配者』(1904) 229 『海の侵略』(1905) 63 『バルザック派遣隊の冒険』(1919、『砂漠の秘密都市』) 229 ●その他の書名、作品名 『新しい世界ともうひとつの惑星』 455 『アベラシオン』 359 『アメリカ・ノート』 290 『異化』 275 『エンサイクロペディア・ブリタニカ』 193 『ガリヴァー旅行記』 129 『観相学断片』 358 『カンディード』 392, 516 『ギャラクシー』(雑誌) 16 『月世界への旅』 455 『幻想芸術』 437 『建築論』 355 『航海便覧』 251 『コーラン』 262-3 『さかしま』 479 『サド侯爵の演出のもとにシャラントン瘋癲院の演劇グループによって上演されたジャン・ポール・マラーの迫害と暗殺』 173 『ジキルとハイド』 439 『十億年の宴』 18 『種の起源』 542 『新アトランティス』 454 『神話作用』 477-9 『ソムニウム』(『ケプラーの夢』) 134 『地下世界』 139 『月の男。神速なる使者ドミンゴ・ゴンサーレス』 82, 455, 464 『月の諸国諸王国の滑稽譚』 83 『デ・レ・メタリカ (金属論)』 303-4 『人間精神発達史』 374 『白鯨』 479 『ハンス・プファールの無類の冒険』 86-7 『ピエール』 440 『批評の解剖』 431 『百科全書』 170, 304, 374, 478-9 『ブヴァールとペキシェ』 479 『フリークス』 459 『プリンキピア・マテマティカ』 158-9 『フロリダ紀行』 239, 269-73, 276, 280, 283 『マッパ・セレノグラフィカ (月面図譜)』 137 『ミクログラフィア』 499 『メディキナ・サクラ (聖なる医術)』 153 『森また森』 454 『ユートピアの歴史』 537
注:
ところが英語圏では、『月世界旅行』はヴェルヌの他の作品同様、無惨に傷つけ られ、勝手に手をいれられてしまってすでに久しいのである。この小説の「翻訳」 と称するものが一八七〇年代に二つ現れた。第一のものは(ここではルーイス・ マーシャの名を使っている)英国の牧師ルーイス・ペイジ・マーシャとそのアシ スタント、エレナー・E・キングによるもので、縮約版のやっつけ仕事である。 彼らの犯した大量の原文削除の結果、ヴェルヌの科学、性格造形、ユーモア、そ して社会的、政治的なメッセージが骨抜きにされている。この「翻訳」はイギリ スとアメリカで刊行された。
その一方ではフィラデルフィアの教師がもうひとつの「翻訳」を出したが、自 分はヴェルヌを「良くした」のだとこの御仁は意気軒昂である。その実、彼は全 ての章に埋め草を詰めこんだにすぎない。雑多な細部をうんざりするほどつけ足 したばかりか、自分の意見まで書き加え、好きなようにヴェルヌを変えてしまっ ているのだ。 (15-16ページ)
横田順彌の『日本SFこてん古典』(早川書房、1980年) によると、最初の邦訳 は明治13年 (1880年) の『九十七時二十分間月世界旅行』(井上勤訳、大阪二 書楼)。米国版 (上の「牧師版」か「教師版」のいずれかであろう) からの重 訳で、ヴェルヌはアメリカ人だとされているらしい。同じ訳者による明治19年 (1886年) 版の訳文はこんな感じ。
劫説[かく]て光陰駸々白駒の隙を過ぐるに似て爰に十二月一日即ち月世界旅行 の当日となりたり今夜十時四十分四十六秒に彼の月球が天心を過ぐると地球最近 の位置に来るとを同時になすの好時期にして若し今夜の好時期を誤るときは会社 の大試験は亦た十八年の後にあらざれば為し能はざるなり実に今夜の貴重なるは 無瑕にして直径一尺のダイヤモンド宝石も遙に之れに劣るべきの価なるべし是日 天気朗晴藍色雲なく初冬已に近きと雖も太陽特に暉々たるは恰も三人の大胆者が 新世界発見旅行の大事業を祝して然るが如く見へたり (横田順彌『日本SFこてん 古典 I』、早川書房、1980年、331ページ)
同じ部分がミラー+高山訳だと、
十二月一日がやってきた。運命の日である。というのも、もしこの日の夜の十時 四十六分四十秒きっかりに砲弾を発射しそこねてしまったら、天頂と近日点に同 時に来るという同じ条件を月が次に満たすまで、実に十八年も待たなければなら ないからである。
天気は申し分なかった。冬が近づいているというのに、陽は地球を燦々と照ら してくれていた。この地球を、その三人の住人は、新しい世界を求めて後にしよ うとしていたのである。(524ページ)
後者には「直径一尺のダイヤモンド宝石」云々のくだりはなく、上にある噂 の「フィラデルフィアの教師」による埋め草かもしれない。分と秒 (46と40) が 入れ替っているのも気になる。
「ラム、オレンジ・ジュース、砂糖、シナモン、ニクズクを混ぜたもの」とヴェ ルヌは脚注している。「この褐色の飲みものは、ジョッキからガラスのストロー で飲む。」 (95ページ)
『リーダーズ英和辞典』には、「sherry cobbler:甘口シェリーをベースに した冷たいカクテル」が載っているが、ヴェルヌ以降に作り方が変わったのだろ うか。それとも別物か。